まえがたつからぜんりつせん


オリジナル創作小説サークル「まえぜん」のブログです。

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純愛

一人妄想劇場4

 今日買い物に行く途中で、多分怪我だと思うんですけど、松葉杖を小脇に抱えて車椅子に乗った、小学校高学年くらいのちょっと大柄な男子を押している小柄で痩せた女子、という組み合わせに遭遇しました。

 兄妹かな?きっとお兄ちゃんはお調子者でクラスの人気者で、妹はクラス委員長を務めるようなしっかり者。
 ちっちゃい頃は、お母さんに妹の世話を頼まれたりしたんだけど、結局お友達と遊ぶのに夢中になっちゃって妹を置いてっちゃって、帰りに気がついて探すんだけど見つからなくって、お母さんに怒られるーって、びくびくしながら家に帰ったら、妹は玄関先で地面に絵なんか描いて待ってる。
 妹が家に入らなかったのは、一人で家に入ったらお兄ちゃんが怒られるって分ってたからなんだけど、お兄ちゃんの方は安心したと同時に頭にきて、つい妹を怒ってしまって泣かせちゃったりして。
 それで今は妹の方が成績も良くて、口もたって「お兄ちゃん、しっかりしてよ」とかしょっちゅう言われてて。
 ある日、ピアノの稽古に出かけた妹の机に楽譜が置いてあって、しっかり者の妹が忘れ物なんて珍しいから、ちょっと鼻をあかすつもりで「届けてやるか」なんて、チャリンコすっとばしたら車に撥ねられて。
 しかも「今日から新しい楽譜だから、それ鞄から出しといただけなんだけど」なんて駄目押し言われて。
 で、今、「ホントお兄ちゃんはしょうがないんだから……」なんつって車椅子押されてるんだったら萌える。

 あ、お調子者と委員長の組み合わせだったら、近所の幼馴染で同級生って設定でも萌えますね。
 ちっちゃい頃は体もデカくてガキ大将タイプの男子にいっつもひっついて歩いてたのは女子の方で、めちゃめちゃ仲良くて「将来結婚する」とか言ってたんだけど、今ではすっごい真面目っこになっちゃった女子は、普段からお調子者の男子を注意ばかりしてて、喧嘩が絶えない状態。
 他の男子からもだんだん煙たがられてるから、車椅子男子もつい女子をからかったり敵対する行動をとっちゃうんだけど、一部のませガキに気取られて、仲をからかわれちゃったりして。
 怒った男子がそいつらを追いかけて行くうちに車に撥ねられて。
 そんな理由だったから本当はお互い会いたくないんだけど、何分小さい頃からのご近所同士なので親同士の連帯感も強くて、「まあ、お宅のぼっちゃん怪我したの?そりゃ大変でしょう?うちの娘に世話させますよ。大丈夫!ちっちゃい頃から『結婚する』ってくらい仲良いんだし、どうせ夏休みで暇なんだから!」なんつって、無理矢理世話させられてるの。萌える!

 夏の暑いのも忘れて楽しかったです。ご馳走様でした。

ネタメモサルベージ・その3_23

 旧々ブログ(2007/12/19)より、小→中 くらいの男女純愛ネタ。その2。

修正
・主人公の部活をサッカーに変更
(体育館の中2階から主人公を見下ろすヒロインが書きたかったんですが、時期的に丁度いい憧れ室内スポーツマンガが見つけられなかったのでカット。いつか別の何かで。)
・主人公の父親への呼び方を父ちゃん→親父に変更

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時代背景・小物検索結果(追加)
キャプテン翼(1981/昭和56年~1988/昭和63年連載→無印)
タイガーショット(「キャプテン翼」日向小次郎の必殺シュート。※初出時期が不明なので暫定使用)
コンビニエンスストア(1971年7月 - ココストアの1号店が愛知県春日井市に開店。1971年8月 - セイコーマート1号店が北海道札幌市北区に開店。1974年5月15日 - 日本におけるセブン-イレブンの1号店が東京都江東区に開店。1975年 - 24時間営業開始。 )
ホットスパー(関東地方、東北地方、沖縄県などでチェーン展開しているコンビニエンスストア。1985/昭和60年3月 1号店オープン。)
銀牙 -流れ星 銀-(1983/昭和58年50号~1987/昭和62年13号連載)
動物のお医者さん(1988/昭和63年1号~終了時期不明。シベリアンハスキーブームの火付け役)
欽ちゃんの週刊欽曜日(1982/昭和57年10月8日~1985/昭和60年9月27日TBSテレビ系毎週金曜日21:00~21:54)

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(部活)
・部員と仲良くなる(男子1)も出てくるが、まだ仲良くない。
・ふざけてタイガーショットを打ってみたり
・校外のランニング中に、下校中の(ヒロイン)を追い越すと、黙ってこちらをじっと見ている。少し哀しげな印象。くすくす笑う男子がいる。
(苛められる、ってこういう事かな?)
もやもやした感情が胸に残る。
****
(昼休み)
 ダッシュで学校を抜け出して、隣に立ったっばかりのコンビニでジャンプを買って帰る。最近は便利になったもんだよ。放課後部の連中と回し読みするんだ。今週は俺の番。

 ・早く買わないと売り切れる(←ジャンプ全盛期)
 ・お小遣いがもったいない(←当時の値段が分かるといい。)

 教室に入ると(ヒロイン)が机の上で何か書いている。覗き込んだら隠された。(犬の絵)
「わぁ、すげぇ。『流れ星 銀』みてぇ。なぁなぁ。次、小次郎描いて。日向小次郎」
 そう言ったら眉を顰めた顔でこっちを見上げた。咄嗟に(やべ…)と身をひいたら一拍置いて
「…サッカー部」
と返って来たので、つい
「そう!俺、タイガーショット打ちたくてさ」
といつもの調子で答えたら、一瞬大きく瞳を見開いてぶふっとふき出した。
「馬鹿じゃないの!?」
 けらけらと涙を浮かべて笑う彼女に怒っても良かったんだけど、それよりもびっくりして。何だよ、ちゃんと笑うんじゃないか。
****
(手紙)
 (ヒロイン)は、話してみると案外面白い奴だった。確かに愛想が悪い所もあるが、面白い話をしてやればちゃんと笑うし、向こうの話題も豊富で飽きない。それと犬が好きらしくて、俺の家にデカイ犬
(シベリアンハスキーを使いたかったが「動物のお医者さん」の連載開始が1988/昭和63年1号からなので、「銀牙 -流れ星 銀-」と時期がずれる。←要再考)
が居る事を告げたら、とても話を聞きたがった。

 ・好きだけど飼えない→マンション?家族がアレルギー?

 調子にのってたんだと思う。
 教室の後ろから手紙が回ってきて、相合傘が書かれている
(週刊欽曜日「欽ちゃんバンド」のネタが使えるか?「アぁチチだぁ~!」はシリーズ前半のネタのようなので微妙。「僕笑っちゃいます」が1983年らしい。)
 頭の中でブチンと音がして、気がついたら後ろの奴に殴りかかってた。先生がぎょっとして「止めなさい!」とか言ってる。その隙に(ヒロイン)が手紙を手に取った。ヤバい、と気が逸れた隙に一発くらった。
「…馬鹿馬鹿しい」
 下を向いて小さく吐き捨てた(ヒロイン)は、手紙を元の形に折りたたむと、普通の紙切れと同じようにゴミ箱に捨てた。(ヒロイン)の仕草は本当にそれが何でもない事のように見えて、気が殺げた俺達は黙って席についた。ほっとして先生は授業を再開する。でもそれきり(ヒロイン)は、前を向いたまま、俺と目を合わす事もしなくなってしまった。
****
(部活2)
・練習をしていると(ヒロイン)がグラウンドを眺めている。距離が遠いので、(主人公)を見ているのか別のところなのかは(主人公)には分からない。
・ただ部員が「あいつまた来てる」と笑うので、(主人公)は誤解する。
 あんなところに立ってられるくらいなら、話しかけてくれた方がいいよ。何であんなことしちまったんだろう。あんなのただのジョークだろ?いつもみたいに笑い飛ばせば良かったんだ。
****
(廊下)
・(主人公)が廊下を歩いていたら反対側から(ヒロイン)がやってくる。どんな顔をしたらいいか(主人公)が迷っていると、(ヒロイン)はゆっくり横を向いてしまった。まるで自分が視界に入っていないような仕草に「わざとらしすぎやしないか」と腹をたてていると、(ヒロイン)はゆっくりと正面に向き直って、初めて(主人公)を視界に捉えて硬直する。その後、ばつの悪そうな顔をしてそっぽを向いた。では(ヒロイン)は何を見てたのか?
****
(部活2)
・休憩中に(主人公)が水を飲んでいると(ヒロイン)が立っている。その眼はこちらではなくグラウンドに向いている。
・グラウンドではサッカー部員の1年が4・5人ボールと戯れている。
「何見てんの?」
 自然に隣に立ったつもりだったんだけど、(ヒロイン)は野良猫が逆毛を立てるみたいにして大きく後ずさった。
「…………何?あんた」
「え?……っと、休憩中?」
 (ヒロイン)は顔を真っ赤にしたまま廻れ右すると、黙ってすたすたと歩き出した。
****

ネタメモサルベージ・その3_13

 旧々ブログ(2007/12/18)より、小→中 くらいの男女純愛ネタ。その1。

・古い時代の設定(昭和)・地方・まだ子供が多い。第二次ベビーブーム?
・ヒロイン/笑わない(と言われる)少女。目つきが鋭いせいで男子に苛められている。市街地出身。男子1の事が好き。
・主人公/「町の外れから市街地の中学へ持ち上がりの男子(分校?)。バレー?バスケ?体育館競技部。お調子者。背が高い。
・男子1/市街地の小学校出身。少女の想い人。主人公と同じ部活。委員長ではなく副委員長とかするタイプ。小学校の時にヒロインとの仲を揶揄われた事があるので、ヒロインの想いを内心快く思っていないが根が善人なので黙っている。
・女子1/主人公達と同じ種類の女子部所属。男子1が好き。ヒロインとのライバル接点はなし。

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時代背景・小物検索結果
ファミコン(1983/昭和58年7月15日発売)
カマキリ(蟷螂権左ヱ門1980/昭和55年。1982/昭和57年頃までは売上が伸び、1985/60年以降は輸入もの自転車が増え始めている、とあるので、全国的なブームはせいぜい61~62年くらいまでと思われる)
第二次ベビーブーム(1971/昭和46年~1974昭和49年生まれ。1973/昭和48年がピーク。団塊ジュニア。4月生まれとして中一で1984/昭和59年~1987/昭和62年)

 

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(OP)
 中学への入学祝いはファミコンがいいって言ったのに、自転車でお茶を濁された。カマキリとかじゃなくて普通の通学用自転車。こんなの毎日使う物だろ?全然祝いじゃねぇよ。と抗議したら父ちゃんに頭を叩かれた。
 4月になったら毎日俺は自転車で片道30分の山道超えて市内の中学校に通わなきゃなんない(俺んちだって厳密に言やぁ市内だけど、あんまり山奥だからこの辺の奴らは市の中心部の事だけ指して『市内』って呼ぶ。)あーあ。嫌だな、自転車。ヘルメットとかダッセぇ。
****
(入学)
 校舎に着いて、まず大きさにびっくりした。建物は4階建てが3つもあるし、廊下が異常に長い。俺達の小学校じゃ学年は1クラスで、クラスメイトは俺合わせて6人しか居なかったのに、いきなり1クラス47人。一学年は11クラスもある。下駄箱とか俺の背丈とそんなに変わんないぞ!倒れてきたら危険じゃないのか? 
****
(ヒロインと隣同士の席)
 名前の順で並んだ結果、運良く俺は前の方の席になった。本当は先生に見つかり易い席なんか嫌だけど、毎日50弱の学生服を見て授業を受けるなんて、正直気持ち悪い。や、待てよ。逆に言えば俺の背中を100個近くの眼が見てるのか?……なんかやっぱ嫌だな。
 いや!ここでなめられちゃいかん!俺は軽く頬を叩いて、とりあえず隣の席の女子に(そう、男女で席をくっつけて座るんだ。生徒数が多くて入りきらないからだろうけど、なんでわざわざ男女ペアにするんだろ?)「よろしくな」って言ったら、ひどくびっくりした顔をされて「……うん」とだけ返ってきた。…あれ?俺、失敗したのかな?
****

小説『3月』 第3章

『3月』第1章<<  『3月』第2章<

 奴の家は、言葉通り学校のすぐ裏手にあった。この辺ではよくありがちな大きさの一戸建てだ。
 「どうぞ」
  送り届けたらすぐに帰るつもりだったが「手当てだけでも」と引き止められた。それに、まぁ、今日の一件で奴の私生活に興味が湧かなかった訳でもない。俺は右足を庇いながら歩く奴の身体を若干支えるようにして、開かれたドアに続いた。

 「うあ、ぁ…」
  見た瞬間、後悔した。何て言うか…、余りにも『予想通り』で。
 「コレ、姉貴の部屋?って事は……ないよな?」
  有り得ないだろうとは思いつつも、念のために口にする。
 「ううん、おね…、姉の部屋はもっと……シンプルだから」
  ああ、確かにそんなタイプだったよ。
  すっかり男姿に戻ったこいつには違和感を感じる部屋だ。淡いピンク色のレースのカーテンがかかった出窓にはチューリップの鉢植えと、耳に赤いリボンのついたファンシーなネコのぬいぐるみが仲良く並んで、午後の日差しを優雅に浴びている。白のカントリー調? のテーブルの上にはパッチワークのテーブルクロスと手作りと思われるクッキーが乗っていて、部屋に甘い匂いを漂わせていた。
  勧められて小花の刺繍が入ったクッションに座ると、擦り傷の手当てを受ける。俺の事より自分の手当てをまずやれよ、と思ったが、さっきから下を向いたまま一心に俺の擦り傷と格闘する姿を見ていたら、何だか言うのが躊躇われた。
 「ん? て事は、姉貴と部屋、別々なんだろ? よく制服借りれたなぁ。見つからなかったか?」
  この部屋の状況から察するに、化粧道具は自前だろう。でもセーラー服を自前で持っているとはさすがに思えない。
 「姉は、高校ソフトで推薦入学したから…。あっちの練習に参加しときたいって、おばさんとこに……」
 「下宿か? 大変だな。そうかアイツそんなに凄かったんだ」
 「でも居ても貸してくれたと思うけど…」
  それはつまり知ってるって事か!? …まあ、でもそうか。こんな部屋の状況で、しかも二卵性とは言え双子だ。気付かない訳がないだろう。
 「お姉ちゃんとは、良く逆になりたいって、言ってた」
 「へぇ?」
 「ホントは、野球やりたかったみたいで…」
 「ああ、確かに女で野球続けるのってまだまだ難しいもんな。それよりさ、それでいいよ」
  唐突過ぎたか、手当てをする手が止まった。でもこれでやっと俺の方を向いてくれる。
 「無理して姉とか、いいから。元だけどクラスメイトだし。話し易い口調で話してくれりゃあさ」
  少しだけ空気が緩んだか、ありがとう、と口元が上がった気がした。

 「なぁ、なんであんなトコで寝てたの?」
 「……今なら誰も居ないと思って……。ずっと、あそこに座りたかったから」
 「ふぅん」
  確かに窓際の一番後ろは人気の席だが、卒業してまでそこに座りたいと思うだろうか。そもそも学校に来たいと普通は思わないだろう。そうまでしてあそこに座りたかった理由は? …胸の奥がざわざわして止まらない。
 「なぁ」
  瞬間、心臓が跳ね上がる。俺、何聞こうとしてんだ、落ち着け!
 「もしかしてお前、俺のこと好きだったりした?」




  …………キョトンとされてる。


  キョトンとされてる! うわ~~~~~~っっっ、俺! ちょっ、馬鹿! 何言ってんの? 何言ってんだ!!
 「ちょっ、ゴメ違っっ! なし! 今のなしだから、忘れて!!」
  心の中でのた打ち回る。穴があったら入りたいとはこの事だ。俺の馬鹿! 自惚れ屋! 自意識過剰!!

 「……あの服で、あの席に座りたかったの。でもあったかいから眠くなっちゃって」
 「じゃあ、姉ちゃんが好きだったのか?」
  錯乱している。んな訳ないだろ! と心につっこみを入れた。でも奴はそんな俺の愚問にゆっくり考え込むように
「お姉ちゃんは、好きだよ」
と言った。
 「……ずっと、お姉ちゃんになりたかった」
  ああ、そうだ。確かにそう言っていた。何聞いてたんだ、俺は。
  俺の周りにいた女共は常に恋愛事しか頭になくて、しかも俺に惚れているのが当たり前だったから、ついその基準で考えてしまった。そうじゃなくて、こいつはただ純粋に憧れてただけなんだ。姉と、その立場に。だからわざわざリスクしょってまで、あの席で…。
 「うちのセーラー、この辺の学校じゃダントツに可愛いもんな」
 「…………うん。それに…」
 「何?」
 「…お姉ちゃんの服着せてもらえるのも、もう最後だと思うし……」
  そっか。こいつの理解者であり衣服の提供者である姉貴は、既にこの家には住んでいない。もしこのままソフトボールで身を立てる事にでもなったら、この家にはもう戻って来ないかもしれないんだ。
  何時の間にか俺の手当ては終わっていたようだ。背中を丸めて両膝の上で拳を握って座っているこいつの姿を見てると、なんだか放っておけない気がする。畜生。こんなすっぴんの、明らかにヤローの状態だってのに、何、振り回されてんだ? 俺は。
  堪らず出窓に目を向けると、レースの向こうでは柔らかな青空に雲がゆっくりと流れている。ああ、穏やかだなー…。こんないい天気の日に、俺はヤローと顔つき合わせて何やってんのかね? このファンシーな世界にあてられたせいで脳がうまく働いてなかったけど、何も中学最後の春休みにヤローの戯言に付き合う義理はねーよなー…。
  と、そこまで考えて顔を戻すと、全然冷静になれてない自分に向き合わされる。畜生、こいつ何だってこんなに…。俯いた奴の瞳に被さった睫毛は変わらず黒く光を捉えていて、教室での無防備な姿を思い出さずにはい

られない。
  駄目だ。俺、もう、さっきから思考がバラバラだ。大体こいつも悪いよ。そもそも春休みの教室に誰かいるなんて、それだけでも驚いたのに、あんな風に……綺麗になってるなんて。
  こいつ、俺に見つからなかったら明日も教室に行ったのかな? きっと姉貴が卒業するまで、この機会を楽しみにしてたんだろう。急に罪悪感が襲って来た。やっぱり何かしてやりたい。でも何を? ――考え付いた事に、俺は罪悪感以外の奇妙な感情が芽生えるのを感じた。

 「なぁ、デートしねぇ?」
  またきょとんとされているが、そんな反応も想定のうちだ。
 「これで最後なんだろ? だったら普段出来ない事やろうぜ。デートしよう、俺と。制服デート!」
  下を向いてしまった。くそ、これじゃ反応が見えない。
 「さっきみたいに、ちゃんと化粧してさ。待ち合わせして、普通のカップルみたいにさ。この辺が恥ずかしいなら遠出でもいいし。あ、俺相手じゃ役不足かもしれないけど、ちゃんとエスコートするから――」
  言いながらどんどん早口になっていく。今まで俺に告白してきた女共は、みんなこんな思いと闘ってきたのか? もしそうなら本当に尊敬する。早く、早く何か言ってくれよ、でないと――

「……残念だけど…」
  やっとで聞けた言葉に、愕然とする。何だ俺、結構期待とかしてた? 

さっき自意識過剰だって反省したばかりだってのに。きっと俺、今すげェみっともない顔してる。
 「さっきの足、ホントは結構痛くて。病院行かないと分かんないけど、外出はしばらく無理だと思う」
 「えっ、大丈夫か? 馬鹿だな、先に言えよ!」
  じゃあ今まで痛みを堪えて俺の馬鹿話に付き合ってくれてたのか? 遠慮にも程がある。
  進み出て奴のズボンをまくり靴下を外すと、右足首が真っ赤に腫れ上がって熱を持っていた。思わずイラっとくる。こんなになっても痛みを堪えているのに気が付かない鈍感な、信頼されてない自分に腹が立った。これじゃ断られるのも当然だ。
 「――とにかく、急いで病院行こう。歩けるか?」
  手を差し出すと、急に顔を上げて来た。突然のアップに心臓が跳ね上がる。
 「――だからね、」
  目が、逸らせない。
 「足が治ったら……でも、いい?」
  決意した顔だった。唇は小さく震え、繋いだ掌にはひやりと汗をかいている。きっと俺が知らぬところで、こいつの中にはいろんな葛藤があるんだろう。
  こいつは責任重大だ。軽々しいことを口にしたかと思ったが、そんな後悔よりも心が浮き立つのを止められない。やっぱり俺って考えなしなんだろうか。
 「最高のデートプランを考えとくよ」

  我ながら阿呆な台詞だ。やっちまったと顰めた眉に、『彼女』は最高の笑顔で答えてくれた。やっと本当の笑顔が見れた事にほっとして、繋いだ手から掬い上げるように身体を立たせてやる瞬間、学ラン姿の奴の袖を見て気が付いた。
 「……あ! 俺、制服持ってねェ!!」
 「そう言えば、昨日も今日も私服だったね」
 「卒業式に布になっちまったんだ。ああー、ごめん。今更だけど、俺は私服でもいい?」
  何が『最高のデートプラン』だ。始まる前からこれじゃ、先が思いやられる。
 「……昔、おばさんに買って貰ったワンピースがあるんだけど、お姉ちゃんゴテゴテして嫌だって一回も袖通してなくって。多分それならタンスに残ってると思う」
  それでもいい? と上目遣いに見つめてくる気遣いに思わず身震いする。
 「――もちろん! ついでに、目いっぱいおしゃれして来いよ」
  分かった。と微笑った奴の顔が紅く染まっていく。そうだ、足が治る頃には桜も咲いている。きっと満開の桜より、こいつの方が紅く色付くに違いない。俺は桜吹雪に浮かび上がる黒髪と薄紅色の頬を想像し、その日が来るのを待ち侘びた。

小説『3月』 第2章

『3月』第1章<

 やっぱり俺は運命なんて信じない。もし本当に運命とやらが存在するなら、廊下に正座させて悪戯でどれだけ人が傷つくか懇々と説教くらわせてやりたいところだ。

  確かにこいつはクラスメイトだったけど、女子ソフト部部長として輝かしい功績を残した姉貴と『本当に双子なのか?』って疑いたくなる程、地味で目立たなくて大人しい奴だった。

 そう言や俺とは別の意味で女子に囲まれてた気もするが…。女子の顔すら殆ど記憶しない俺が、とりわけ仲が良い訳でもないヤローの面なんか普段まともに見ちゃいなかったし、こいつちょっぴり化粧すらしてるし…。そりゃちょっとは似合ってると思ったけど。……大分見とれたりしたけど。
  性質の悪い冗談だ。こめかみを押さえたいところを堪えて、右手の中で埃を被っている黒髪を多少見られる形に整えて手渡しながら
「何かの罰ゲームな訳?」
と、思いつく限りで一番無難なあたりを聞いてみた。
  しかし(元)彼女は質問には答えず、カツラも無視してポケットからハンカチを取り出すと、差し出した右手の甲に当てようとした。ダイブして彼女を支えた拍子に、いつのまにか擦っていたらしい。
  最近の女ときたら、エアータオルが普及したせいか知らないが、ハンカチなんてそもそも持ち歩いちゃいない。ひどい奴だと『スタイリング』とか言って髪の毛で手を拭いたりしている。ところがそいつの取り出したハンカチは、今時どこで売っているのか真っ白な無地に小さなレースの付いた、正に『ハンカチーフ』って言葉の似合うハンカチで、つい「いいよ」とその手を払ってしまった。

  その瞬間、彼女(彼?)の顔色が変わった。
 「…………ごめんなさい…」
  消え入りそうな声で言われて、初めて自分のした事に気付いた。
 「違う、待てって!」
  逃げ出される前に手をつかんで捕まえる。
 「そんな白いハンカチ当てて、血のシミ付いたら落ちなくなっちゃうだろ!」
  だから―― と続けようとして、うつむいた彼女の顔がみるみると、また紅に変わっていくのに絶句してしまった。引き留めようとする余り手を強く握り締めていたらしい。表から勢いよく入ってきた春の風に、彼女のセーラー服とカツラの外れたショートヘアが大きく跳ねる。さらさらと柔らかそうな色素の薄い髪。咄嗟に身を固くした彼女の掌からは、こもった熱と一緒に小さく震えているのが伝わってきて、なんだか、すごく可愛い…。

  って、違うだろ! 彼女じゃねーじゃん。馬鹿か、俺は!!

  どうしようもなく混乱している。なんなんだ、これは??
 「……とりあえず、さ。それ脱いでもらう訳にいかねーかな?」
  ついその場にしゃがみんで言ってしまったが、しまった、これも失言だった。
 「あ、えっと、だからさ、そのカッコで来てなければ、なんだけど! 普段通りのカッコじゃないと、ちょっと緊張するっていうか! 脱いでくれって言うんじゃなくて、着てくれって言うか! …ンだあああっっ、もうっ」
  我ながら何言ってんのかさっぱりだったが、彼女(あああ、もういいか? 彼女で。めんどくせーから。)には伝わったようで、小さく頷くと小走りで教室へと戻って行った。助かった。少なくとも変態の汚名は免れたようだ。
  誰もいない昇降口は春の日差しが差し込んで暖かい。俺は段差に腰掛けて彼女のもつれた黒髪を直しながら、着替えが終わるのを待つことにした。ふと解く手に出来ていた擦り傷に目が止まる。あんなに躊躇いなく差し出せるあたり、あのハンカチは自前なんだろう。て事は、罰ゲームとかいじめの路線は消えた訳だ。まあ、いじめの線は初めから考えちゃいなかったけど。卒業してまでいじめなんて暇なことされるとも考えにくいし、そもそもいじめをされているような奴だったら、もう少しクラスで目立った存在になっていた筈だ。
  そうなると、やっぱり、アレの類なのか…?

  思わず天井を仰いで目を閉じる。自分の周りにそんな奴がいるなんて、考えた事もなかったな。ちゅうか俺、ソレに惚れてんだよね? え、惚れてんの? 男が男に惚れるなんて、そんなのあり得んのか!? ホントにこの俺が?? 違うだろ。だってアレは女だと思ったから、可愛いなーと思っただけで! 男に惚れるんだったら、すでに卒業前に惚れてて良かったってことじゃん、クラスメイトなんだから。全然、目にも留まらなかったぜ? 顔も朧なくらいだったし!
  そうだ、そうだ、と無理に自分会議が決着したところで奴が帰って来た。やれやれ、と振り返って見た奴の学ラン姿に、また絶句した。
「……ごめん、やっぱさっきのに着替え直して」

  そう言やこいつ、化粧してたんだった――。



  結局、俺たちは学ランで奴の家に帰る事になった。俺の動揺に気付いた『彼女』は、
 「大丈夫。もうちょっと待ってて、って言いに来ただけだから」
と言うと、植え込みの裏側にある水道で、身を隠すようにしながら器用に化粧を落とし始めた。確かにそこなら、植え込みのせいでグラウンドからも教室からも死角になる。よく考えてるよな。それにクレンジングまで持って来ているなんて用意周到だ。
 つまり奴は、学ランで登校して、校内で着替えて化粧して、また着替えて化粧を落として帰ってたって事だ。そこまでして……?
  考えれば考える程、アレの疑惑が確信に変わっていく。いや、人の趣味をとやかく言う義理は俺にはないよ? ないけどさ。

 「…ごめんなさい」
  化粧を落として完全に見知った姿に戻った『奴』は、小さな声でそう言った。
 「驚かせて…、怪我までさせて……。ちゃんと手当てしたいけど、保健室は使えないし…」
  確かに保健室に行ったら、卒業した身分にもかかわらず無断で忍び込んだのがバレてしまう。
 「いや、いいよ。大した傷じゃないし。つか怪我したの俺のせいだし。そっちこそ平気だった? その……とびかかったりして」
 「あ、ううん、平気」
  音が鳴るほどぶんぶんと首を振る。思い出したのか、また耳が赤くなっている。
 「じゃあ、これで」
 「あ、待って」
  気まずさに立ち去ろうとした俺を、慌てて引きとめようとしたそいつは(さっき首を振り過ぎた余韻が残っていたのかもしれない)腕をつかみ損なって、そのまま横に崩れ落ちた。今、変なコケ方しなかったか?
 「オイ、大丈夫か?」
  引き上げてみたが、またへたりと座り込んでしまう。
 「今、ひねったんじゃないのか?」
 「……かも」
  何でさっきのダイブじゃ無傷だったくせに、こんな何でもないところで…。ま、とにかく、しゃーない。
 「送って行くから。家、どこ?」
 「うん、すぐそこ。あの……ごめんね」
 「いーから」
 「ホントは家が近いからそこで手当てさせて、って言おうと思って引き止めたんだけど」
 「それで自分が怪我してちゃ、世話無いな」
 「……ゴメン」
 「だから、いーって」

  ちゅうか、やっぱ俺のせいだろ?

>『3月』第3章

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「まえぜん」について
「まえぜん」とは、"まえがたつからぜんりつせん"の略。
オリジナル創作小説の個人サークルです。
PNはサークル名と同じ"まえぜん"。
子育てライフ満喫しながら、まったり活動再開妄想中^ ^;



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同性愛・BL・百合・ショタ・ロリ・SM・女装・近親相姦等、無節操に恋愛物を取り扱っていく予定&気が向いた時更新。
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